1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

記事

記事公開日

最終更新日

人的資本経営は、なぜ"空洞化"するのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人的資本経営は、取り組むこと自体が目的になった瞬間に空洞化しはじめる。私たちはそう見ています。本稿では、その入口を3つの場面から整理します。

こんな違和感はありませんか

  • 研修は予算がついたから実施した。ただ、経営に「何のための投資か」と問われると、答えに詰まる
  • スキルの棚卸しと可視化は進んだが、その結果を次に何へ使うのかが決まらない
  • 人事が「重要です」と提案しても、「なぜ今のやり方を変えるのか」に答えきれず、稟議の途中で止まる

人的資本の情報開示が求められるようになり、「人的資本経営」は経営会議の共通語になりました。人材への投資が大切だという認識も、広く共有されています。それでも上のような声が聞こえてくるのは、なぜでしょうか。

私たちは、この手応えのなさを、取り組みの量や熱意の問題ではなく、議論の「始め方」の問題だと考えています。

経営から財務まで、ストーリーは一本につながっているか

人的資本経営で大切なのは、次の流れが一本の鎖としてつながっていることです。

上流:経営の言葉で語る領域

経営戦略

▼

必要な組織能力

▼

人材要件

▼

人材ポートフォリオ

▼

多くの議論が、ここから始まりやすい

採用・育成・配置・評価

▼

下流:成果として確認する領域

業務成果

▼

財務成果

図:経営戦略から財務成果までの鎖(7段階)

研修や制度は、この鎖の5番目に位置します。ところが実際には、5番目から議論を始めてしまうケースが少なくありません。

数字にも、その傾向は表れています。PwCコンサルティングのセミナーレポート(2025年5月)では、量と質の両面で人材ポートフォリオを構築できている企業は6%にとどまるとされています。

また、デロイト トーマツの「有価証券報告書における開示実態調査2025」では、人的資本投資の成果(アウトカム)を定義している企業は18%、一部を定義している企業は29%でした。

私たちはこの結果を、「人材投資が足りない」というより、「何のための投資かを、経営の言葉で語れる状態になっていない」姿として読んでいます。

3つの違和感は、鎖のどこで切れているか

以下は統計ではなく、私たちが企業の現場でよく耳にする話です。思い当たることがあるかどうか、自社の場面と見比べてみてください。

① 研修が「予算があるから」「人的資本経営と言われるから」で選ばれる

選定の理由が、事業の課題ではなく、予算や流行になっている。研修自体の質が高くても、経営の問いにつながらないまま終わります。

② スキルの棚卸し・可視化から入り、「何のために」が飛ばされる

可視化は大切な作業ですが、「どの経営課題のためのスキルか」が先にないと、データは集まっても、次の一手が決まりません。

③ HR担当が「重要」と推しても、「なぜ既存のやり方を変えるのか」に答えられず、稟議で立ち消える

提案自体は正しくても、「なぜいま変えるのか」を支える経営上の根拠が薄いと、現場の課長・部長を動かせません。

この3つには共通点があります。どれも、前節の鎖の「人材ポートフォリオ」から「採用・育成・配置・評価」のあたりから議論が始まっていることです。

私たちの見方:打ち手から始めると、鎖は途切れる

私たちは、研修・制度といった「打ち手」から議論を始めると、鎖の上流(経営戦略・必要な組織能力)と下流(業務成果・財務成果)をつなぐ説明が空白になりやすいと考えています。打ち手が悪いのではありません。打ち手を選ぶ理由が、上流から追えなくなるのです。

だとすれば、起点を逆にすることが考えられます。

  • 事業として、いちばん解いておきたい経営課題は何か
  • その課題を解くには、どんな組織能力が足りないのか
  • その能力を支える、どんな人材の構成が必要か

こうした問いに答えてから、初めて研修や制度を選ぶ。順番を変えるだけで、同じ投資でも経営とのつながりが見えやすくなるというのが、私たちの見方です。

打ち手から(現場でよく見られる順序)

1

研修・制度を先に選ぶ

2

理由を後から探す

3

経営への説明が弱くなる

 

経営課題から(私たちが提案する順序)

1

経営課題を先に定める

2

必要な組織能力を特定する

3

人材の構成を描く

4

研修・制度を選ぶ

図:議論の起点を変える。上段は現場でよく見られる順序、下段は私たちが提案する順序です。

ここで、最初の一問を置いておきます。

今期の人材投資は、どの経営課題を解くためのものですか。それは、何を見れば「効いた」と言えますか。

この問いに一文で答えられるところから、鎖はつながり始めます。次回は、この問いの前に立ちはだかる、日本企業に共通する4つの経営課題を整理します。
次回コラム:カイゼンの限界、ブレーキ人材、世界基準との乖離 ― 4つの経営課題を整理する

ご案内

自社の「鎖」を、一緒に見直してみませんか

Learner's Learnerでは、企業のリーダーシップ開発プログラム「Managing Complexity」を提供しています。自社の人材投資を経営課題から整理し直すご相談を、個別にお受けしています。2027年4月開講のコースに向けた個別相談もこちらからどうぞ。

個別相談のお申し込みはこちら

出典

  • PwCコンサルティング「真の人的資本経営に向けた人材ポートフォリオ・マネジメント」セミナーレポート(2025年5月)
  • デロイト トーマツ「有価証券報告書における開示実態調査2025」
  • 内閣官房・金融庁・経産省「人的資本可視化指針」改訂(2025年12月)

※「現場でよく聞く話」は私たちの現場での見聞きであり、統計ではありません。

 

ミネルバ式リーダーシップ
サービス概要資料

御社のリーダー育成に「ミネルバ式 リーダーシッププログラム Managing Complexity」がどのように貢献できるか、詳細資料でご確認ください。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ミネルバ式リーダーシップ サービス概要資料

Managing Complexityについて、詳しくはお気軽にお問い合わせください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お問い合わせ

リーダー育成に関して資料・セミナーを展開しています。
ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。